前回の後発品についての記事では、多くの場合問題ないと書きましたが、今回は問題あるケースについて書きたいと思います。
まず、マタニティブログということで、子供の薬に関して。
子供に関しては、大人とちょっと状況が違ってきます。
一つは、味。
後発品は成分・含有量以外は先発品と同じとは限りませんから、当然味も違うことが多いです。大人だったら理解できる違いでも、子供は正直。以前粉薬(ドライシロップというものですが)を後発品に変えたら、味を嫌がるようになったとお母さんからお話があり、もとに戻すことになりました。
もちろん、後から出たということで味も工夫を施しているメーカーも多くあり、かえってこちらの方がうまく飲んでくれるという話も聞きますので、お子さんの好み次第ともいえます。
二つ目は、混ぜ合わせるときの相性。
医療用医薬品は、大抵1つの製品に1つの有効成分です。中には○○配合錠、配合シロップ等複数混ざっているのもありますが、ほとんどは1つの成分のみで、医師が適に組み合わせて処方します。それを薬剤師がチェックし、シロップや粉なら混ぜていいものに関しては混ぜて作ります。そのほうが飲む回数が少なくて済みますからね。でも中には混ぜると苦みが出たり、沈殿物ができたり、品質が落ちたりするから混ぜられないという組み合わせも存在します。それを判断するのも薬剤師の仕事なんですが、ここに後発品が混ざると悩ましい問題が出てきます。混ぜた時のデータが少なく、判断が難しかったりするものや、先発なら混ぜてもいいけど後発だと混ぜられない等の問題が出てくることがあるからです。
例を一つ。ある「抗生物質」は酸性のものと一緒に飲むと、苦みが出ます。オレンジジュースなどの酸味のあるものと一緒に飲まないでくださいね、とお話しすることも多い薬です。それを、ある「痰の切れを良くする薬」と一緒に出そうとしたとき、粉同士だと苦くなりますが、痰の切れを良くする薬をシロップに変えると一緒に飲んでも苦くなりません。pHの問題なんですが、これが後発品になると、シロップにしても苦くなることがあるのです。
三つめは、色とにおい。
大人は気にしないことが多いですが、子供は色やにおいも気にする場合があります。
白い薬は嫌だけど、ピンクならいい。と言っている子は、後発品に変えて色が白くなったら嫌がりますので。白い薬が以前とても苦かったとか嫌な思い出があるのかもしれませんね。
こういったことは、粉やシロップで出されることの多い子供の薬で起きやすいことですが、大人にも関係することがあります。
一つは外用薬です。
貼り薬では、貼り心地の違い、粘着力の強弱、におい、かぶれの有無などが問題になります。
塗り薬では、塗り心地や、2種類を混ぜた時の相性です。先発なら問題なかったけど、後発は混ぜられない、混ぜにくい、なんてこともありますので。
二つ目は、安定剤など、精神薬です。
向精神薬などは、正直気持ちも大きく左右します。○○という薬が私に合っている、と思っている方に、無理無理それの後発品を渡したところで効果が薄く感じてしまうこともあるのです。プラセボ効果ともいえるかもしれません。でもこれが結構大切なんです。飲めば落ち着くという結果が大事なので…。
三つめは、微妙な効果の変動でも心配されるような薬の場合です。
薬の中には、血液中の濃度を定期的に測る必要のある薬も存在します。副作用が出る範囲と効果のでる範囲が狭くて近い薬は、特に注意しなくてはなりません。後発品には、微妙に血液中の濃度の推移が先発品と違うものもあります。多くは問題になるほどではないんですが、そういった薬については、状態が崩れる心配がありますから、無理に薬を変えないほうがいいと考える場合もあります。
最近の処方箋は、基本的に薬局で先発品を後発品に変えられるんですが、医師が、指示した薬から後発に変えてほしくない場合には、処方箋の該当する薬の横にチェックが付けられるようになっており、それは薬局では変更できないようになっています。
私も変更を勧める際は気を付けていて、個々に違いを出しています。不安が強い方や、安定剤の変更は無理には勧めませんし、外用などの使用感の違いを感じやすい薬については丁寧に説明するようにしています。逆に、前回書いたようなオーソライズドなどは積極的に勧めますし、値段が安くなるならなんでもいい、とおっしゃる方はガンガン変えます。
医療費がどんどん膨らむ中、後発品も適切に使っていきたいものです。