墓地のCMを見てふと思い出した話です。
祖父が亡くなって、もう15年近くになろうとしています。
薬局から駅までの道のりを、両親がたまに車で送り迎えしてくれていたのですが、ある日、父がおもむろに私に訊ねました。
「なぁ、じいちゃんの墓、覚えてるか?」
「え?おじいちゃんの?」
父方の祖父母が暮らす家は山の奥地にあり、山と山のくぼみの川沿いに家がある感じです。そのため墓地も山の中。行くのも一苦労でした。登る時ににつかまるのは杭を打って渡してある一本のロープのみ。冬は坂が雪と氷に覆われて、滑る滑る…。まさに危険な道のりでした。
「亡くなった人のためになんで私たちが命かけて墓参りに行かなきゃいけないのよ~」
と母が泣き言言いながら登っていた記憶があります。
祖父が亡くなった当時、我が家にお墓はまだありませんでした。だから、予定の土地にお骨だけ埋めて、おっきな石を墓石代わりにしたような…。
「そうか、大きい石を近くに置いたのか…」
父がなるほどというようにつぶやきました。
ん?父よ、まさかどこに埋めたか覚えていないのか??
そして数日後、母が迎えに来てくれたときも同じことを聞かれたので、そのように回答。
「そうよねぇ…お母さんもそんな風に覚えてるわ。あとね、青い容器に入れた気がするのよねぇ」
う~ん…二人してどうしたんだ???
さらに1か月くらい後…母から驚きの話が。
「やっとお墓建てたのよ~。あそこ(山の中)じゃあ行くのに命がけでしょ?だからふもとの寺にお墓を建てて、お骨を移動したの。…でもね、お母さん、疑問なのよ…」
「???なに?」
「あれは本当におじいちゃんのお骨かしら…?」
「…へ?」
どうやら山の中にショベルカー運んで掘り起こしたそうなんですが(その時点で骨壺自体粉砕の危機なんですが)、なかなか見つからず。やっと見つかった骨壺を、父が「うん、じいちゃんの骨だ」といったそうなんです。でも、私の記憶していた大きな石も近くになく、母の記憶にあった青い容器にも入っていないお骨だったらしいのです。
「え、じゃあ今お墓に入っているのはおじいちゃんじゃないかもしれないってこと?」
「…まぁそうなのよ…でもお父さんが『これだっ』て言うからさぁ…」
「えええ~???」
去年の夏、旦那さんが語学留学したいということで短期間海外に出ていたので、私は休み中実家に帰省し、墓参りに行きました。
以前の記憶にあった、石一つだったお墓に比べ、ずいぶん立派に建てられていました。やっとちゃんとしたお墓に入れて良かったね…。
手を合わせながら、私は問いかけました。
「…でも、本当にあなたは私のおじいちゃん?」